夏になってせつなくなって
『資生堂VSカネボウのCMソング戦争』などと言われていた80年代。
そんな中でも俺が高校生だった1983年夏の代表曲には、ラッツ&スターの『め組のひと』(資生堂)やYMOの『君に胸キュン』(カネボウ)、早見優の『夏色のナンシー』(コカコーラ)や稲垣潤一の『夏のクラクション』(フジフイルム)など、今でも口ずさんでしまうキャッチーな名曲が揃っている。
イントロやサビを聴くだけで当時の夏の日が蘇り、胸がいっぱいになってしまうのだ。
そんな名曲揃いの中でも、やはりその当時はまっていた甲斐バンドの『シーズン』には特別な思い入れがある。(ちなみに当時サントリーのCMで流れていた。)
ロック少年だった俺には、少々生温いメロディーラインとサビのコーラスが軟弱に思えた。
キャッチーなメロディーラインも媚びを売ってる感じがして好きになれなかったのだが(そういう年頃だった)、あれから歳を重ねるにつれてこの曲の良さが染み渡るようにわかってきたのだった。
このシングル曲が収録されたアルバム『GOLD』を引っ提げた新宿副都心(現在の都庁のある場所)での野外ライブ『THE BIG GIG』の映像が衝撃的で、あの真夏の熱さをクールダウンさせるように始まる『シーズン』は、暮れ行く空と照明のコントラストがなんとも言えないくらい美しく、そして泣けるほど優しいメロディーの中から溢れてくるバンドのダンディズムに心を奪われてしまった。
その後も幾度となくライブでこの曲に触れて来たが、曲間のブレイク後のギターのユニゾンや間奏のテナーサックス後のコーラスなど、ゾクゾクしてしまう瞬間と穏やかで寝てしまいそうになるくらいの心地よさの中、ふと何気なくくちずさんでいる歌詞の意味を知り、そしてせつなさに震えてしまうのだった。
青き星の群れ 煌めく海岸で
俺たちはいつも出会うはずだった
くちづけを交し せつない息づかい
その中で固く結ばれるはずだった
今も光失った その目でおまえが笑ってる
今から行ける海に行き 傷んだハート死にたえる前に
『シーズン』 作詞・作曲 甲斐よしひろ