週刊中年オッサンデー

中年おっさんの趣味や日々のくだらない話

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笑ってはいけないデンパサール空港

初めてのバリ島旅行での事である。

予定通りに無事バリのデンパサール(ングラ・ライ)空港に到着した。

イミグレを通過してスーツケースをピックアップした後、なにやら荷物を持ったまま長い列に並ぶように促された。

『ずいぶんと入国するまで面倒なんだな...』

長旅の疲れもあり、ぶつぶつと文句を言いながらも言われるがままに列に並んだ。

 

俺たちの前には映画スターのような美男美女の白人夫婦が、山のような荷物を乗せたカートと共に並んでいた。

長期バカンスなのだろう、馬鹿でかいスーツケースの傍らには、ぬいぐるみを抱えたブロンドの髪の少女が、愛くるしい顔でこちらを見ている。

きっと自分の父親とはまるでかけ離れた容姿の俺を見て、この世の物ではないとでも言いたげな眼差しが疲れた俺の体に突き刺さった。(←被害妄想)

しかし、それはまるで映画のスクリーンから飛び出して来たかのような理想的なファミリーに見え、同じ空間にいる我々家族が何だかとても誇らしくも思えた。(←あほ)

 

しばらくすると麻薬探知犬を連れた迷彩服の係員?(警察官?)がやって来た。
 

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『 ガウルゥルゥゥゥゥ.... 』

麻薬探知犬のおぞましい唸り声と、威勢のいい警察官の掛け声に張りつめた空気が漂いはじめる。

 

まずは隣りの列の前方から順番に、探知犬が荷物を嗅ぎわけながら後方へと進んで行く…というような流れだった。

 

すると俺の斜め前方にいた、ちょっとぽっちゃり目の中華系の女性に犬が近づくなり、急に何かを察知したのか、クンクンと執拗に嗅ぎたて始めたのだ。

 

『.....ん?どうしたんだろう?』

 

ただならぬ犬の動きにその周囲は緊張感に包まれだした。

ちなみにその女性の見た目は、派手なイケイケ風ではなくむしろ真逆で、ハリセンボンの近藤春菜のような感じ。

なので、まず犬のセンスを疑ってしまった。(←そこ?!)

 

犬があまりにもしつこくその女性(というか正確には女性の尻)にまとわりつくので、係員が首輪(リード)を強く引っ張りながら

『ゴー!ゴー!!』

とその女性から引き離そうと促すのだが、

離れると何故かまた、くるりと顔だけターンして女性のケツに鼻をグリッと突っ込むのだった。(?)

 

当然、周囲にその一部始終を見られている恥ずかしさからか、春菜は頬を赤らめている。

それを察知した係員も、

『ほら!もう、いい加減にしろ!次に進め!』

と言わんばかりにリードを強引に引っ張って、犬に離れるように促すのだが、
何故か犬は、一瞬その場を離れるようなそぶりを見せかけといて、(フェイントで)またその女性(の尻)に戻るのだった。

 

なぜだ?!ハリセンボンだぞ?

 

欲情しているわけではない事くらいは俺でもわかるのだが、

それでも犬の好みに納得がいかなかった。(←そこじゃねーだろ?)

 

『別に見た目で選んでるんちゃいますねん!ワン!!』

 

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いったいこれは何なんだ?

この茶番はバリ伝統の歓迎セレモニーのアトラクションの一環なのか?

いや、もしかしたらこの女性は、何か巨大な組織に利用されて(巻き込まれて)
ケツに薬物を埋め込まれている事に気がついてないのではないか?

もしくは、ただ単にパンツにうん○が着いているだけなんじゃ.....?

 

色んな妄想が頭の中を駆け巡り、ただ自問自答を繰り返すだけの俺....。

 

そんな周囲の微妙な空気もお構いなしに、犬は本能の赴くままに何度もターンしては春菜のケツに鼻を押し付ける…という、まるでドリフのコントような一連のやり取りが、ただいたずらに繰り返されていた。

 

 

係員『コラッ!!』グイッ!(とリードを引っ張る)

      ↓ 

『…ガウッ!』(とターンしてケツに鼻を突っ込む)

      ↓

女性『もうやめて~』(と赤面して心の中で叫ぶ…様に見える)

      ↓

『...ううっ.....』(笑ってはいけない状態に耐える)

 

という一連のループを見せられ続けている俺達の心はすでに国境を超えて、不思議な連帯感を生み出し始めようとしていたのだった。

 

『絶対に笑ってはいけない...』という暗黙のルールの下、
早くこの地獄のような時間が過ぎ去ってくれる事を、きっとそこにいる誰もが祈っていた事であろう。

『おお、神よ…アーメン…』

 

その光景はまるで目の前で、

『笑ってはいけないワールドカップが繰り広げられているかのようでもあった。

 

そんな状況に耐え切れなかったのか、

俺の目の前にいた映画スターの彼が、低音の渋い声でこうつぶやいたのだ。

 

『オーマイガ...』

 

それはまるで、いかりや長介『ダメだこりゃ...』をそのまま英語に吹き替えしたかのような、そんなあきらめの嘆きに近いニュアンスだった。

 

 

『ピーッ!!はい、イエロー!!』

 

 

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 ......もう駄目....俺、笑っちゃう。。。

 

まさかこの期に及んで、本場のオーマイガーを出してくるなんて…(涙目)

卑怯じゃねーか......

 

 

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俺はあっさりと脱落してしまった。

 

一度笑ってしまうと、もうニヤついた顔はそう簡単には元にもどせない。(というか戻らない。)

 

そんな俺のにやけ顔を見て、嫁さんがこう言った。

 

『他人の事笑ってるけど、大丈夫なの?』

 

『はっ...!!』

そうだ、忘れてた...。

チャンギ空港でうん○した時に拭きが甘かったのか、
なんとなくケツの穴がむずむずしてネバーランドになっていたのだった(!?)

 

『や、やばい、どうしよう…』

 

しかも笑ってはいけない緊張感から解き放たれた安心感からか、ほくそ笑んだついでにこっそりと屁をこいてしまっていたのだった。(←内緒)

 

きっと俺(の尻)もあの犬の餌食になってしまう…(ぶるぶる..)

もう既に俺たちの列の後方から、こちらに迫って来ているではないか....(汗)

 

さっきまでのニヤついた気持ちは何処へやら、きっとこれからこの公衆の面前で晒し者にされ、更に世界中のSNSでこの醜態を発信されるであろう自分の身を案じ、俺は子羊のように怯えていた。(←かなり大袈裟じゃね?)

 

『ガウルゥルルル~』

 

 荒々しい、いや犬の息遣いが、地鳴りのように俺に近づいて来た。

 

いよいよ嫁さんと娘の足元にたどり着いた犬は、俺たちのスーツケースを嗅ぎ分け、
そして俺のケツを2度見するなり....

 

『ガウウッ!!!』

 

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『ハウッ!!』

 

 

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『いや〜ん....。やっぱり来てもうたや~ん…(恥)』

 

まるでパズルの最後のピースがピッタリとはまるかのように、完璧に俺の尻の割れ目に犬の鼻がはまったのだった!!

 

『ううっ....』

 

俺は少女のように恥じらいの声を漏らしながら(?)、そっと隣りの列に目を向けた...。

 

すると…(

 

まあ、なんという事でしょう!

 

先程のハリセンボン春菜がこちら(俺)のこの状況を見てほくそ笑んでるではないでしょうか…(!!

 

『いや、おまえが笑うなっ!!』

 

......と、怒りに震えながら、

 

『今、ここ!!オーマイガじゃね?!』 

と、映画スターにつぶらな瞳でダメ出しを助けを求めるキュートな俺。

 

もう既にお互いグループリーグ敗退が決まっている消化試合なのに、
相手の理不尽なアピールによって判定が覆えされた挙句にPKで決勝ゴールを決められたような、そんな屈辱感に俺は打ちひしがれていた。(例えがまわりくどい)

 

 

 

 

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『はぁ~~~.......。』

 

 

そんな俺の当たり所のないモヤモヤは、きっと寺田心をいじめたくらいでは到底収めきれない程にやさぐれていた。

 

完璧に世界の壁に跳ね返された状態のまま、ようやく初めてのバリ島旅行は幕を開けたのであった。

 

つづく

 

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