少年時代/井上陽水 思い出の名曲~夏のうた⑨
仕事を辞めた俺は、当時付き合っていた彼女を連れて車で故郷に帰った。
帰ったといっても全てを引き払って田舎に戻ったというわけではなく、時間が出来たので久しぶりに遊びに帰ってみたのだ。
さすがに実家に何の連絡もなしに彼女を連れて行くのは少しためらいがあった。
片道300キロ程の距離を休みながら運転していると、あっという間に陽が落ちようとしていた。
何もない田舎の高速道路が夕焼けで真っ赤に染まりかけた頃、FMラジオから流れて来たのが井上陽水の少年時代だった。
夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれにさまよう
青空に残された 私の心は夏模様
まるで今自分が、生まれ育った町、少年時代にタイムスリップしているかのようなそんな錯覚に陥っていた。
目が覚めて 夢のあと
長い影が夜にのびて
星屑の空へ
夢はつまり思い出のあとさき
黄昏色に染まった懐かしい景色の中に車ごと溶け込んでしまいそうな、そんな不思議な時間だった。
少年時代の夏休み
誰にでも特別なものだった。
こんなおっさんになった今だって、夏が来るとあの頃と同じようにわくわくするんだ。
そう、きっとこの先も