白いパラソル/松田聖子 思い出の名曲~夏のうた⑧
俺が中学生の頃、人気アイドルの筆頭といえば紛れもなく松田聖子だった。
ちなみに俺は中森明菜派だったのだが(←どうでもよい)、松田聖子の歌う曲はアルバム収録曲も含めて非常にクオリティが高く、今聴いても名曲揃いである。
もっとも作品提供アーティストの名前を並べてみても、大滝詠一や細野晴臣、財津和夫、松任谷由実、尾崎亜美、甲斐よしひろ、佐野元春、原田真二、来生たかおなど、ビッグネームがずらりと顔をそろえているのだから力の入れようがわかる。
あれは中学校の野外活動でのキャンプ
夜のレクレーションでの事だった。
他クラスの女子が、その顔からはとても想像つかないような綺麗な歌声で松田聖子の『白いパラソル』を歌った。
まだ発売して間もない頃だったのだろうか、あまり聴き馴染みのないその曲の優しいメロディーにそこにいた誰もが聴き入っていた。
日常から離れた星空の下、その澄んだ歌声は顔さえ見なければまるで松田聖子本人が歌っているかのようだった。
キャンプファイヤーを囲んでのフォークダンスだなんて、カッコ悪くて面倒くせぇな…などと強がっていたのだが、内心はその非日常的な雰囲気に俺はどっぷりと飲み込まれていた。
それでも素直にはなれない年頃からか、いきがってウィスキーを持ち込んでいた俺達は、テントの中で飲酒していた所を見つかってしまい、夜中に外に並ばされてこっぴどく叱られたのだった。
翌日のオリエンテーリングにも参加させてもらえず、罰としてキャンプ場内を延々と走らされた。
その上ひねくれついでに、「あいつらが作った飯なんか食えるか!」と、女子達が作った昼飯(カレーライス)を拒否して食べなかったのだ。
はぁ〜
今思えばガキすぎて笑えないほど幼かった。
学校に戻ると、一連の悪行に対してすぐに親が呼び出され、更にこっぴどく叱られたのだった。
現実に戻された俺達にまたいつもの日常が始まった。
その夏の間、松田聖子の白いパラソルを耳にするたびにあのキャンプでの出来事を思い出し、そして戒められた。
♪渚に白いパラソル
このサビのワンフレーズを口ずさんだだけで、何故だか胸がいっぱいになって泣きそうになる。
あの夏の坊主頭の少年が、またあの夏に俺を手招きしてるのだ。