週刊中年オッサンデー

中年おっさんの趣味や日々のくだらない話

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五月春が過ぎてく夕暮れ時 〜黒い夏/甲斐バンド〜

1976年にリリースされた甲斐バンドの3枚目のオリジナルアルバム

ガラスの動物園

 

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ルー・リードの『Walk on the Waild Side』そのまんま?と思わせる『新宿』を筆頭に、Aメロがスパークスの『Never  Turn Your Back on Mother Earth』の『テレフォンイローゼ』、CCRの『I Heard it Through the grepevine』を彷彿させるアレンジの『悪いうわさ』など、甲斐よしひろが影響を受けたのであろうアーティストからインスパイアされてそのエッセンスを取り入れている曲が目白押しのアルバム。

 

悪い言い方でパクリだと言われればそれまでなのだが、甲斐よしひろの曲作りにおけるこの手法は、メロディーラインやアレンジ、歌詞のみならず、彼の敬愛するアーティストとその音楽へのオマージュであり、そしてロックの伝道師(?)としての彼の役割は、その後の日本のロック界において多大な影響を与えたと思う。

 

現に俺も甲斐バンドをきっかけにストーンズやCCRにはまり、そこからまたブルースへと掘り下げて行ったものだ。

ロックは継承されて行くものなのである。

 

そんな彼らのこのアルバムの中にもお気に入りのナンバーが3曲収録されている。

 

当時中古レコード店がいたるところに存在していて定期的に巡り歩くのが楽しみだった。

掘り出し物を探し求めては、ほぼ中古で買い揃えていた。

しかし、どんだけ探し歩いてもこの『ガラスの動物園』だけは見つけ出す事が出来なかったのである。

シングルヒットが収録されていた訳でもないので、それ程出回らなかったのかも…

 

そんな高3の春の事、痺れを切らした俺は遂に中古ではない新品を取り寄せして、やっとこのアルバムを手に入れたのであった。

長い間探し求めていたジャケットに興奮し、同時にそれが甲斐バンドの全アルバムをコンプリートした瞬間でもあったので、とても印象に残っている。

 

当時既にリリースされていたニューヨーク3部作とは対局的な、初期のアコースティックな印象の中でも特に気に入ったのが、『男と女のいる舗道』~『あの日からの便り』の2曲だ。

 

『男と女の~』は、このアルバム発表前に先行シングルとしてリリースされていたそうなのだが、もちろん聴いたのはこのアルバムが初めてであった。

続く『あの日からの便り』への2曲の流れは、甲斐独特のメロディーラインに郷愁をかきたてられ、つい胸がいっぱいになってしまう。

 

全体的にアコースティックな印象が強いこのアルバムは、『らせん階段』をトップに持ってきている事からもよりその印象を強くしているのだが、ちなみにこの『らせん階段』は既にライブ盤で聴いていた曲の中でもどうしても好きになれない曲の一つだった為、『何故こんな地味な曲が1曲目(正式には2曲目)なんだろう?』と不思議に思っていた。当時はレコードなので仕方なく流していたのだが、その退屈さを切り裂くようにギターのリフが流れた。

 

2曲目(正式には3曲目)の黒い夏である!

 

♪ 五月春が過ぎてく夕暮れ時 音も立てず電車が夏にまっしぐら ♪

 

歌の向こう側で繰り返すギターリフがかっこよくて、あっという間にこの曲の世界に引きずりこまれた。

 

このアップテンポのナンバーですら、前述の2曲と同じようなノスタルジックな雰囲気があり、そしてバンド独特のうねりもあって、このグルーブ感がすごく心地よくて今でも大好きだ。

 

後に伝説の『照和』でのライブで、この曲を一発目に演ったと聞いた時には非常に後悔したものである。というのも、抽選でチケットが当たったにもかかわらず、仕事で行けなかったのだ。。。。(泣)

 

そんな事もあってか、この曲を聴くたびに高3の春の自分と仕事で見逃してしまった当時の自分が蘇ってきて、色んな思いが入り乱れて胸が熱くなるのである。

 

 

 

ガラスの動物園

ガラスの動物園

  • アーティスト:甲斐バンド
  • 発売日: 1992/06/24
  • メディア: CD