バブル絶頂期の1986年、大学入学と共に東京で暮らす事になった。
若かりし日、19の春である。
その年の夏にリリースされた浜田省吾のニューアルバム『J-BOY』
2枚組というボリュームで、当時はまだアナログ盤で買った記憶がある。
当時は買ってすぐに帰りの車や電車の中で聞く事が出来なかった。
とにかく一刻も早く家に帰って、ステレオの前で針を落とすしかなかったのだ。
その分、一発目に出て来る音のワクワク感はハンパなかった。
先行シングルで発売されていた『BIG BOY BLUES//SWEET LITTLE DARLIN'』
『LONELY//もうひとつの土曜日』が収録されている事(録りなおし)や、
『路地裏の少年』のロングバージョンが収録される事、
昔ライブで演っていた『19のままさ』『遠くへ』を初レコーディングする事など
アルバム発売前から内容がある程度わかっていたので、
それまでのアルバムに比べると、それ程期待感も抱かなかった。
なぜならそれまでに聴いた先行シングルが、あまり好みではなかったからだ。
当時は今のように、曲の途中で簡単に次の曲に飛ばすという事も出来なかったので、
とりあえずレコードが回っている間は歌詞カードやアルバムジャケットを眺めながら
我慢して(?)聴いていたものである。
このアルバムで浜省はオリコンNo1のチャートに上り詰めた。
ライブの箱と共に、浜省自身がどんどん巨大化して遠くなっていくように思え、実際そこからチケットは取りづらくなっていく。
そんな事もあってか、個人的には残念なアルバムに思えた。
そんな中でも気に入って繰り返し聞いていたのが、
1枚目のA面(レコード)の3曲目~ラストまでの3曲である。
『AMERICA』~『思い出のファイヤーストーム』~『悲しみの岸辺』
この3曲とこの曲順の流れがすごい好きで繰り返し聴いていた。
『悲しみの岸辺』などは、それまでの浜省の壮大でメロディアスなバラードとは打って変わり、ミディアムスローのR&B調であっさりとなんとなく盛り上がりにかけるサビなのだが、聴けば聴くほど染み入るようになった。
そして、あれから30年以上が経ち、この歳になるまでに様々な経験をしてきたが、
いつも励まされてきたフレーズは『J-BOY』でも『路地裏の少年』でもない。
~答えなどないのさ 悲しむこともない すべては移ろい消えてく~
このフレーズにいつも救われてきたような気がする。
数々の別れや失敗を繰り返して、その都度落ち込んで、
悩んだり、考えて、そして持ちこたえてきた。
そんな時にいつもふと思い浮かぶメロディー、このフレーズ
今でもふと自分に言い聞かせようとする場面に出くわすと、
自然にこのフレーズが湧き出てくる。
~答えなどないのさ 悲しむ事はない すべては移ろい消えてく~