トラブルドキッズ~ARB①
高校に入ったばかりの頃、本格的にギターを始めた。
それまでもアコースティックギターでジャガジャガと簡単なコードを押さえる事は出来ていたのだが、バンドアレンジに興味を持ち始めた事でエレキギターを手にしたのだ。
当時、バンドを組むと何故かARBからコピーを始めるという流れが自分の周りでは多かったような気がする。
まず、いきなり英語でバリバリ歌える奴など俺の住む田舎で探すにはハードルが高かったし、ギター、ベース、ドラムという最小限のメンバーで始められるのも手っ取り早かったのだ。
また、ARBの持つ硬派で尖ったイメージも、いきがっていた高校生の俺達には都合がよかった。
そして何よりもそのシンプルながらも研ぎ澄まされたようなソリッドな演奏とバンド独特のうねり、耳に残るメロディーと歌詞が胸に刺さった。
アルバム『W』、『トラブル中毒』の曲を中心に夢中になってコピーしたものである。
『魂こがして』というライブアルバムは、俺の中ではARBのベストアルバムだ。
当時組んだバンドでベースを担当した際にも手始めにコピーしたのが、このアルバムに収録された曲だった。
中でも耳障りの良いコード進行の『トラブルドキッズ』は、特にお気に入りだった。
リズムボックスに合わせてベースラインを録音し、その音に合わせてギターを弾くという練習を兼ねた一人遊びにはまり出したのもこの曲がきっかけだった。
ベースも同時に覚えた事により、よりバンドアレンジの魅力に引き込まれたのと同時に、それまでの俺が俺がの自己顕示欲満載のギタリストから、一歩引いたクールなベーシストに憧れを持つようにもなった。
しかし、サンジのゴリゴリベースはカッコよかったな...。
キースのドラムと一郎のギターにピッタリはまってたのはサンジのベースだった。
田中一郎の弾くギターの切れのあるカッティングや、腰の浮くようなギターソロはまさしく俺のギターの先生だった。
このアルバムを最後にARBを脱退し甲斐バンドに加入する事になるのだが、その当時のオーケストラ的アンサンブル要素が強い甲斐バンドの1ピースよりも、ギター小僧のように弾きまくるARB時代の一郎の方がはるかに魅力的だった。
『トラブルドキッズ』を聴くと、ARBを離れた当時の一郎を思い出してなんだかせつなくなる。
後にもメンバーチェンジを繰り返してもライブで演奏され続けていたけど、やはり一郎のギターとサンジのベースにはどんなアレンジを施しても敵わないんだよな...。