寂しさがどこから来るのかわかるまで彷徨うつもりなの
1981年9月にリリースされた浜田省吾7枚目のオリジナルアルバム
『愛の世代の前に』
ロサンゼルスで録音された前作『HOME BOUND』リリースから、たったの11ヶ月でリリースとは今では考えられないくらいのハイスピードである。
当時の雑誌のインタビューを読むと、わずか2週間でレコーディング(しかも作詞と同時進行で..)というのがびっくりである。
この時代の浜省の作るメロディーラインと水谷公生のアレンジはまさに秀逸であり、それがたったの2週間で作り上げられたとは思えないほどイントロから間奏まで練り上げられていて、40年経った今でも決して色褪せることのない名作である。
発表当時、中学2年生だった俺はこのアルバムをカセットで買った。
何度も何度もテープが伸びるくらい聴きまくったものである。
先行リリースされたシングル『陽のあたる場所』や『ラストショー』、後々のドラマの主題歌により大ヒットとなる『悲しみは雪のように』、『愛という名のもとへ』、そしてライブの定番のアルバムタイトルナンバーや『土曜の夜と日曜の朝』など、収録曲すべて名曲揃いなのであるが、個人的に大好きなナンバーが2曲目に収録されている『モダンガール』だ。
浜省の代名詞でもあるメッセージ性の強いロックナンバーやメロディアスなバラードでもないミディアムテンポのR&B系のナンバーがとても心地よくて好きなのである。
♪ 昨夜俺のベッドを抜け出しソファーで
♪ ぼんやり窓の外を見てたねラジオつけて
リズムは心地よいのに、何故かこのAメロが俺の琴線に触れるのである。
初めてライブに行ったのは、『ON THE ROAD 83』だったかな…
当時は春と秋、年に2回の全国ツアーがあって、高校に入学したばかりの春だった。
1曲目の『終わりなき疾走』で初めて目の前で歌っている浜省を見た興奮で頭の中が真っ白になっている状態で始まった曲がこの『モダンガール』だった。
イントロが流れて、歌いだすのかと思いきや、ピアノの伴奏に合わせての
『やあ!』 という浜省独特の不自然な挨拶(?)から、
楽しんでってください..というようなメッセージの後に歌いだしたのが、その前述のメロディーだった。
♪ 馬鹿だぜ俺 そんな君に恋してる でもこのままじゃいつかさよならさ
間奏でこのツアーから新しく加入したばかりの古村敏比古(当時は敏彦)のサックスが心地よく鳴り響いた。
この時にやっと冷静になった自分に気がつき、
『ああ、本当に今俺の目の前で、浜田省吾&FUSEが演奏してるんだ..』
と考えて感動したのを覚えている。
今でもこの『モダンガール』のメロディーを聴く度に、あの頃を思い出して胸がキュッと締め付けられるのである。
♪ モダンガール 寂しさがどこからくるのか わかるまで彷徨うつもりなの?