1994年12月に発表された甲斐よしひろのソロアルバム
『太陽は死んじゃいない』
甲斐バンド時代から長年在籍していた東芝EMIよりポニーキャニオンへ移籍して発表した唯一のアルバムでもある。
甲斐バンド解散後、ソロとして3枚のオリジナルアルバムをリリース、その後KAI FIVEでの活動へと移行して行った頃には、ほとんどライブに足を運ぶ事も発売日にCDを買う事もなくなっていた。
おそらく当時の生活が(学生から社会人へと)変化した事もあって時間的な余裕がなくなってしまったのもあるのだが、なんだかその当時の自分が求めていたものからかなり離れてしまったのも事実である。
その後安定した生活を求め転職をし、所帯を持つつもりで彼女と同棲を始めたものの、慣れない仕事に振り回される日々でやがて大切なものを失ってしまった。
この先どうやってモチベーションを保って生活をしていけばいいのかもわからず、ただ抜け殻のように仕事に没頭していた時期だった。
日暮れの早い冬の夕刻時
その日も俺は、いつ終わるかわからない仕事を片付けるためにトラックを走らせていた。
そんな時、つけっ放しの車のラジオから流れてきたのがこの曲だった。
♪ 橋の明かりつく頃 家路に人は急ぐ
♪ 弱い太陽の下で 俺は何とかやってる
埼玉から都心へと向かう橋の明かりの中、胸がいっぱいになって気がつくと涙がこぼれていた。
自分のその時の状況と心情が
あまりにもそのままの言葉(歌詞)で甲斐よしひろの声とメロディーが俺の胸に突き刺さった。
正直、甲斐バンド後期からのあまりにもハードボイルドよりの非現実的な歌詞に、俺の心を強く揺さぶられる事が少なくなっていた。
ライブに行っても、今ひとつ感情移入出来ない醒めた自分がいるのもわかっていた。
そうだ。俺にとっての等身大の甲斐よしひろが戻って来たんだ。
しばらくしてからこのアルバムを手に入れた。
『橋の明かり』『渇いた街』『GET』『かけがいのないもの』『ラヴァーホリック』
『光あるうちに行け』
何度も何度も繰り返し聴いた。
そして救われた。
世間的にはそれほど評価の高いアルバムではないようだが、俺にとっては今でも大好きなアルバムの一枚である。
しかし、その後の『GUTS』と『PARTNER』という2枚の残念なアルバムにより、また俺の気持ちが離れてしまった事も付け加えておく。